別れまでの12日(15/18)肺がん闘病記
ピーチーの状態は劇的に下がる事はなくなりましたが、ゆっくりと下降していきます。
それを悲しむと言う気持ちはありません。
全てを受け入れて、看取りという一連の時間の中にいたように思います。
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ピーチーに「行かないでくれ」という気持ちは全くありませんでした。
神様には「どうか穏やかな死を」と祈りました。
「最後にかけてやる言葉は何だろう?」
そう考えるようになりました。
最後は泣かないということだけは、ずっと前から決めていました。
最後は笑顔で送ろうとも決めていました。
以下、当時のブログです。
3月28日 早朝|単純で可愛いやつ
先ほど、ピーチーが立ち上がりたそうにしていたので、水飲み場&トイレにつれていってやりました。もう体には力が無くて、ゆるゆるの状態です。僅か数日で、お腹周りがほっそりして、体も軽くなってしまいました。
ピーチーは水を飲もうとしますが、水を張った洗面器に口が届きません。頭を下げられないのではなく、どうやら水面を認識できないようです。
洗面器を持ち上げてやると、ピチャと音を立てて一舐めしてそれで終わり。
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飲みたいんじゃないのかい?
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酸素を口に当てているので、喉は乾いているようですが、それと水飲み場に行くのは別の行動のように思えます。生きるためのルーティーンのようなものを、半分無意識にやっているのでしょう。その後にシリンジで、スポーツドリンクを飲ませてやったら、旨そうにしていました。
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2時間ほど前ですが、うちの奥さんがトイレに連れて行ったら、自分でトイレにオシッコをしました。褒めてやったらとても嬉しそうでした。こっちもあんまり嬉しかったんで、写真を撮り損ねました。
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最近は何をやっても、もしかしたらこれが最後の――
という考えが脳裏をよぎります。
最後のごはんかな? 最後の水かな? 最後のオシッコかな?
そんなときには、とても切ない気持ちにもなりますが、すぐに気持ちを切り替えて、「なんだ、まだ出来るじゃないか」
と、それを打ち消すように、大喜びしてやります。
飼い主が喜ぶと、ピーチーも釣られて嬉しそうにします。
単純なやつです。そして、とても可愛いやつです。
今年のお花見は室内で
時間を遡りますが、昨日はうちの奥さんが、近所でツクシを摘んできました。
毎年この時期には、裏の土手で、家族でお花見をするのが恒例で、うちではその時には土手のツクシを摘んで、菜の花とツクシのパスタを作るんです。
ピーチーはツクシを見つけると、その頭を鼻ではじいて、よく胞子を飛ばしていました。
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ピーチーの鼻先にツクシを近づけてやりました
無反応でした(笑)
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今日の夜は、家の中で、家族でお花見をしました。
奥さんが一昨日拾ってきた桜の木の枝を、水差しに活けてあるので、それを見ながらのささやかなお花見です。
外の桜はまだまだ咲いていませんが、家の中は暖かいので、うちの桜だけは外よりもちょっと早く満開です。
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さあ、始めよう!
恒例のお花見!
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せっかくのお花見ですから、僕たちは横浜名物、崎陽軒のシウマイ弁当を買って来て、食べました。ピーチーにはハチミツを舐めさせてあげました。
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シャンパンを開けて――
ピーチーのために乾杯。
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それから、家族写真を撮りました。
手に持っているのは、ピーチーの好きな木の棒。
ブロ友さんからは、『ピーチー棒』と呼ばれてました。
今のピーチーは
今、奥さんは寝ていて、交代で僕がピーチーの様子を見ています。
ピーチーは今、酸素を吸入しながら、僕の机の下でうずくまっています。
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ここはピーチーの定位置
やっぱり落ち着くね!
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ピーチーは、段々と意識のレベルが下がってきています。
昨夜の時点では、もう新しい朝を迎えることは無いだろうと思いましたが、今、窓の外はうっすら明るくなってきています。
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ピーチーの目はうつろで、力はありませんが、僕の事も、奥さんの事も分かっているみたいです。
僕にも奥さんにも、小さな後悔みたいなものは沢山残っていますが、大きな悔いはありません。ピーチーにもないと思います。
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今日は僕も奥さんも、ずっと家にいます。
この後、どうなるかは分かりません。
どうするかも決めていません。
全ては、ピーチーと相談しながらです。
――第4章|看取りの記録を読もう(18/29)――
この記事について
作者:高栖匡躬
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表紙:今回の表紙は、ピーチーです。
――次話――
ピーチーがひどくつらそうにしている昼頃。
安楽死の言葉が頭をよぎりました。
ついにその時か?
決断をしかけた時――
ピーチーが勢いよく身をよじりました。
「まだ一緒にいたいんだよ、きっと」
「そうだな」
主治医の診療時間が、決断のリミットでした――
――前話――
この日はマンションは防災点検でした。
火災報知器の警報音が嫌いなピーチーは、酸素テントの中で暴れました。
寝たきりだと思っていたのに、まだこんなに力があったのか――
本当に悪いのは、肺だけなのですね。
もしかしたら、まだまだ大丈夫なのかな?
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