終末期を楽しむという選択(1/4)
愛犬との別れの時、皆さんはどのように我が子を見送りたいでしょうか?
きっと多くの方は、その場で泣き崩れてしまうのではないかと思います。
泣いて別れを惜しむ以外に、別れの方法は無いのでしょうか?
例えば、”泣いて”の対極にある、”笑って”で愛犬を送るということはできないのでしょうか?
実は筆者は、愛犬を”笑って”見送ったのです。
最後のご褒美をあげよう
愛犬がこの世を去る瞬間の事を書こうと思います。
筆者は2016年3月29日に愛犬ピーチーを亡くしました。その時の経験をお話すると、”その瞬間” というのはとても切ないです。もう会えないのだという思いが、強く胸に迫まってきます。
それは人間との別れの時も同じなのですが、愛犬の方がより感情移入が激しいと思います。相手が親や友人ならば、運が良ければ最期の言葉を交わせるし、そうでなくてもその少し前には、何かを語らったという思い出があります。
犬の場合は話すことができないので、一方的に飼い主が感情移入している状態です。
だから、より胸が痛むのだと思います。
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さて、ここで皆さんに質問です。
愛犬との別れの瞬間ですが、泣くべきだと思いますか? それとも笑うべきと思いますか?
最期の瞬間だけではありません。介護の最末期、ああこの子はきっともうすぐ遠くに行くと思ったときに、どうするべきだと思いますか?
色々な考えがあって然るべきですが、筆者は自分の愛犬は、笑って送ってやりたいと思っています。
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それは何故か?――
犬は飼い主のために生きますね。いや言い直しましょう。飼い主を喜ばすために約15年の平均寿命を生きます。それは犬の本能で、飼い主の笑顔が、犬にとっての最高の喜びなのだそうです。
15年(ここでは平均寿命を使います)を、飼い主の笑顔を楽しみに生きてきた犬が、最後の瞬間を迎える時――
やっぱり、ご褒美をあげたいと思うんです。
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泣いて愛犬に、感情を素直に伝えてあげるのも愛情です。
でも筆者は、最後のご褒美には、やっぱり笑顔を上げたいです。
筆者の愛犬ピーチーを笑顔で見送りました。無理に作った笑顔ではなくて、本当に笑顔がでした。ピーチーらしい爽やかな去り方でしたし、笑って送ると決めた時から、心の準備はしていました。だから出来たのだと思います。
どうせ泣くのならば
念のために申し上げておきますが、愛犬の死が嬉しくて笑っているわけではありません。良く生きた愛犬を称えるための笑顔です。
実は笑顔の奥では、心からドクドクと無防備に血が流れていたように思います。
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顔で泣くか? 心で泣くか?
どうせ泣くんだから、顔は笑顔でご褒美を上げて、心で泣くのが良いんじゃないかなって思います。
――もちろん、どちらが正しいという事はありませんし、どちらが素晴らしいという事でもありません。やっぱりそれは、飼主の生き方に従って、飼い主らしく送るということなのでしょう。
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筆者は今、新しい犬を迎えています。名前はピィ子で、まだ子犬です。
今から考えるのは、ちょっと早すぎるようにも思いますが、やっぱりピィ子も笑って見送りたいと思っています。15年生きるピィ子の天国へのお土産には、15年間の中で最高の笑顔を持って行ってほしいです。
ピーチーに持たせてやったよりも、もっと大きな笑顔を……
――第2章|犬の死とは(7/10)つづく――
この記事について
作者:高栖匡躬
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表紙:むぅとんさん(飼い主:むっちさん)です。
――次話――
特別なものに思えていた看取り。
しかし体験してみると、それはいつもと同じ日常の中にありました。
最期までトイレが上手くできたら誇らしく、家族がそばに居ると嬉しいのです。
きっと“死ぬ”なんて考えないで、いつものように“眠った”のではないかな?
――前話――
人間は死の間際、良い思い出だけが走馬灯のように巡ると言います。
それは脳科学でも、検証されているのだそうです。
いつか自分の臨終のとき、私たちは一番会いたい時の愛犬に出会えるわけです。
その時君は、どんな姿をしているのだろう?
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▶ 第2章の初話です
▶ この連載の初話です
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