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君が旅立つまでのこと

君は旅立ってしまったけれど - あとがき

君は旅立ってしまったけれど

本作を読んで下さった皆様へ

『君が旅立つまでのこと』をお読みいただき、ありがとうございます。
本作は愛犬ピーチーが天国に旅立った後、闘病や看取りの時の思い出や、そのときに心に芽生えた色々な感情を記録しておこうと、書き始めたものでした。

ピーチーの最期の闘病は、たった1回のてんかんの発作から始まりました。しかしその時は、まさか1年も経たずにピーチーがいなくなってしまうことなど、想像もしていませんでした。何しろあの頃のピーチーはシニア犬の年齢ではあるものの、若いころと同じように、毎日元気に走り回っていました。

その後ピーチーはてんかんの重積発作、劇症肝炎、多発性関節炎、肝炎症状の再発と、次々と襲ってくる病魔を跳ね返していきました。その勇姿を見るたびに筆者は、「我が子ながら、大したものだ」と思いました。

しかし、全体的な方向性としては、回復をしても元の状態までは戻り切らず、階段を一歩一歩下って行ったように思います。

ピーチーが病を得る度に、筆者はピーチーを助けたいために、インターネットに散在する色々な情報を集めました。しかし役に立つ情報は、そう多くはありませんでした。
次に闘病や看護、または介護に役立つ情報を得ようとしました。しかしそれらも通り一辺倒のものばかりで、ほとんど役に立ちませんでした。

唯一役立ったのは、他の飼い主さんたちが書かれた闘病記です。
それを読む都度筆者は、自分は一人ではないのだと実感しました。そして情報がなくても自分なりの方法で、手探りで頑張って行こうと、自らの心を鼓舞していたのです。

ピーチーが体を張って、筆者に教えてくれたことがあります。
それは、『病気も、闘病も、看護も、介護も、看取りも、いざ対面してみると、そう悪いものではない』ということです。

それらを悲しんでしまうと悲劇になりますが、悲しみさえしなければ悲劇ではありません。悲しみは目を曇らせ、そこに本来あるべき、キラキラと光り輝いている幸福を、感じさせなくしてしまいがちです。

最後の最後まで笑いも、喜びも、驚きも、そして幸福もあるのに、それを味わうことなく時が過ぎるのはもったいない話です。

だから本作は、その時に感じたありのままを、飾ることなく書こうと思いました。

本作に書いた内容は、実は沢山の方が書かれている闘病ブログの中にも、メッセージとして込められているものです。しかしそれを感じるには、しっかりと読んで、理解して、文章の向こう側にある真意を汲み取らなければなりません。

愛犬が病気になって、悲しみの底にある飼い主さんは心に余裕がなくなりますから、それはなかなかできないでしょう。筆者自身がそうでしたから。

我が子に不幸が舞い降りている最中に、よその子の闘病記を読むのは、思った以上にエネルギーがいるものなのです。

本作は筆者がピーチーが教えてくれたことを、出来る限り率直に、直接的に書いたつもりです。オブラートにくるむことをせず、言葉の奥に真意を込めるようなこともせず、ストレートにメッセージを伝えようと務めました。

今まさに悲しみの底にある飼い主さんの心の届けるためには、それが一番良いと思ったからです。

実は本作に書いた内容は、ピーチーの闘病が始まった時に、筆者が探し求めていたものでです。しかし当時はどうしても辿りつけませんでした。だから本作は、当時の自分に向けた書きました。あの頃の自分に「頑張れ」とエールを送るために。

直接的に書いた分、反論も異論もあることでしょう。
しかし直接的であれば、まどろっこしいことをせず、飼い主さんはそれを基にして自分なりの考察ができるでしょうし、その先では飼い主さん同士で議論だって出来ます。

本作は、皆さんの思考の起点であり、 "たたき台” であってくれれば良いと思っているのです。

さて本作は、皆さんと愛犬のお役にたってくれるでしょうか?

『病気も、闘病も、看護も、介護も、看取りも、そう悪くはないね』

ほんの少しでも、そんな風に感じていただけたら本作は大成功。
これ以上の喜びはありません。

 2016年8月1日
 ピーチーパパ

犬を飼って良かった

君が来て、家族には笑顔が増えた
躾は大変だったけど、お陰で私は我慢強くなった
毎日散歩して、仲間だって増えた
でも――、君はあっという間に歳をとった
ヨロヨロ歩く君を見て、
もしかしたら、私は優しくなった
犬にも、人にも
ありがとう、天国の君

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――お読みいただいて、ありがとうございました――

この記事について

作者:高栖匡躬
 ▶プロフィール

表紙:今回の表紙は、ピーチーです。

――前話――

第5章の最終話です。

ピーチーが去って4か月がたち――
幸いにも大きなペットロスには陥りませんでした。
ピーチーを思い出すと、寂しくはありますが、悲しくはありません。
むしろ、寂しさは楽しめるものであると思います。
闘病も、介護も、看取りも――
全てが良い思い出です。

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この連載の初話です
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