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今夜は一緒に寝ます - タイムリミットを過ぎて【闘病記】

肺がん_今夜は一緒に寝ます

別れまでの12日(17/18)肺がん闘病記

ピーチーの苦しさは、側で見ていてよくわかりました。
しかし、文句も言わずにピーチーはそれに耐えていました。

いや、耐えていたのかどうかは分かりませんね。
受け入れていたのは確かです。

安楽死の選択は、ずっと頭の中にありました。
ピーチーに痙攣など、劇的な症状が現れたら、恐らくはそれを選択していたはずです。

時間は過ぎていきました――
決断のタイムリミットは、主治医の診療時間である18時です――

以下、当時のブログより。

3月28日 夜|思い出の散歩道

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安楽死を決断する区切りと考えていた、18時を過ぎました。
今日はピーチーと一緒に寝ようかと思います。

苦しそうではありますが、ピーチーはまだ、僕と奥さんと一緒にいたいようだと感じます。

今日はマンションの踊り場から、一緒に外の景色を見ました。
本当は、一緒に歩きたかったんですけどね。

あっちは、ときどき行ったドッグラン
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お前は、ドッグランは苦手だったよな

 ●
こっちは、いつもの散歩コース
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お前は、散歩が大好きだっだよな!
最後に行ったのはいつだっけ?

 ●

テラスからはどの方向を見ても、14年間の思い出で一杯です。

不意に歩き始めたピーチー

さっきまでリビングで寝ていたピーチーですが、何を思ったか、突然起き上がって、僕の部屋の方に歩き出しました。

 ●

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これはリビングにいたピーチー

 ●

僕は急いでピーチーと一緒に、酸素のジェネレーターを移動させました。

これまで書いていませんでしたが、実はこの移動は結構大変です。
酸素ジェネレーターのスイッチを切り、コンセントを抜いて、重い機材を移動させてそこでまだコンセントを差して、スイッチオン。
ピーチーを移動させて、吸入マスクを被せてやる。

ピーチーが苦しくないように、それを15秒ほどのうちにやるのです。
まるで自動車レースのピット作業みたいです。

 ●

移動を終えて、ピーチーをいつもの定位置である、僕の机の下に寝かせてやると、ピーチーは「ありがとう」と言うように、首を持ち上げました。

移動して、首だけピクリ
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お礼何ていらないぞ、ピーチー

 ●

ああ、もうちょっと大丈夫そうだな、ピーチー。

そうそう、ピーチーは歳をとってから、耳がだらりと寝るようになっていたんですが、ここ数日はピンと立っています。ブルテリアっぽいです。

明日も良い日になるといいな、ピーチー。

 

――第4章|看取りの記録を読もう(20/29)――

この記事について

作者:高栖匡躬
 ▶プロフィール

表紙:今回の表紙は、ピーチーです。

――次話――

 
何も知らない、両手に少し余るほどの小さな子犬は、
14年7か月前に、ダンボールに入ってやって来て、
うちにピッタリの子に育って、
いつの間にか飼い主を追い越していきました。
最後は、自分で決めたのかい?
お前らしい去り方だったよ。
ピーチー

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――前話――

ピーチーがひどくつらそうにしている昼頃。
安楽死の言葉が頭をよぎりました。
ついにその時か?
決断をしかけた時――
ピーチーが勢いよく身をよじりました。
「まだ一緒にいたいんだよ、きっと」
「そうだな」
主治医の診療時間が、決断のリミットでした――

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肺がん闘病記の初話です         
第4章の初話です 
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