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君が旅立つまでのこと

僕たちの決断 - もしも言葉が交わせたならば【闘病記】

劇症肝炎闘病記

緊迫の7日(6/18)劇症肝炎闘病記

DVMs(動物医療センター横浜)から帰り、ピーチーの手術を行うかどうかを考えました。帰りがけに掛かり付けの動物病院の院長先生に出会えたのは、幸運でした。

外科手術に傾いていた心が、それによって、もう一度冷静に考えてみようという気持ちになれました。

愛犬の治療と言うのは、なにも治そうとするばかりが治療ではないという気持ちにもなりました。残された時間が僅かであるのなら、それをどう有意義に使うかという事も、大事な治療ではないかと思いました。

治るのか? 治らないのか? 賭けるのか? 賭けないのか?

幾つもの思いが、頭の中を駆け巡りました。
以下、当時のブログからです。

8月17日 夜|飼い主の決断

少し前に、DVMsから帰ってきました。
今日は、担当医に直接、僕たちの選択を伝えに行ってきたのです。

実はと奥さんの考えは、そう迷うことなくまとまりました。
お互いに同じようなことを考えていたからです。

結論から言うと、『手術はしない』という事。
もうピーチーには苦しい思いはさせないで、内科的な治療だけを施し、それが駄目なら素直に逝かせてやろうと考えました。

しかし、内科的治療を選ぶと言っても消極的なものではありません。
ある種の賭けを含んだアグレッシブなものです。

――奥さんの考えはこうです――

手術をし、肝臓の一部を取り出して生検にかけたとしても、結局縫合後にやるのは内科的な治療。それならば、体へのダメージを少なくして、内科的治療の選択肢を増やし、幾つも試した方が得。

――僕の考えはこうです――

劇症肝炎は取り敢えず脇におき、ピーチーのてんかんの悪化が早すぎる。
脳に病変が無い原因不明のてんかんが、こんなに早く悪化するとは思えない。どう考えてもおかしい。

口のきけないピーチーが、体を張って僕たちに訴えているのは、一連の出来事について、『ちょっとおかしいでしょ?』ということ。だったらピーチーの声に従おう。

ピーチーの『ちょっとおかしいでしょ?』で、僕が最も疑っているのが、”自己免疫不全”

自己免疫不全性による脳炎が、てんかんと、四肢の運動障害を引き起こしたと仮定し、それに加えて今回、自己免疫不全性の肝炎が加わったというのなら、ピーチーの体に起きていることが、全体に説明がつきます。

今夜の面談で担当医師に伝えたことは以下の3つです。

まずは手術はやめるということ。
次に自己免疫不全に的を絞った治療をしてほしいということこと。
そして最後の1つは、もう完治は期待しないので、長くダラダラと肝臓病と付き合っていける着地点を見つけて欲しいということ。

自己免疫不全ならば、ステロイドの大量投与

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自己免疫不全に的を絞るとなると、ステロイドの大量投与が待っています。

これにはリスクがあり、自己免疫不全性の肝炎には効きますが、通常の肝炎には逆効果で、肝臓に過度の負担を掛け、弱り切ったその肝臓に止めを刺す可能性があるのです。

しかしここで担当医師から、思わぬ朗報がありました。
ピーチーの関節5か所から細胞を採って検査したところ、5か所共にウイルス性ではない炎症反応が出たとの事です。これはピーチーの歩行障害が、自己免疫不全性の関節炎である可能性を強く示唆しているとの事。

これで治療方針が定まりました。ステロイドの大量投与です。
担当医師も賛成をしてくれました。むしろ、ステロイドをやるタイミングは今しかなく、これを逃すと手遅れになるとの事。

早速、今夜から投与が始まります。

不安はあるけれど

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もし的外れだったらどうしようとは思いませんでした。ピーチーの『ちょっとおかしいでしょ?』に従えば、選択肢は他にはありません。後はピーチーの強運に掛けるだけです。

担当医師には、これまでに別の理由で取った血液検査のデータや、以前の膵炎+胆管閉塞の際の治療プラン、検査結果を渡しました。
これらは、何かの時のためにと、うちの奥さんが大切に保管しておいてくれたものですが、バインダーに束ねた状態で1.5cmはあり、改めて見ると凄い量です。

担当医師との面談が終わった後、またピーチーに会わせてもらいました。
今日は幸いにも処置室が開いていたので、集中治療室からそこにピーチーを連れてきてもらいました。

決めたけど、良いよな

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ピーチーは床に敷かれたバスタオルの上に、べたっと四肢を広げて、大の字の腹這い状態です。痛いとか苦しいとかではなさそうですが、グッタリとして動きません。

目はうつろな状態ですが、僕の動きを追っています。
まだ生きようとする力を感じます。

僕はピーチーに、「決めたけど、良いよな」と言いました。
ピーチー何も言いませんが、その目は優しかったです。

夜の面談は、うちの奥さんが外せない予定があったので、僕一人行きました。
帰りはもうすっかり日が暮れて、その日は月も無く、街灯がぽつぽつとあるだけの薄暗い道です。自動車の整備工場から明かりが漏れていました。

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もしも言葉が交わせたとしたら

実は前のブログで恥ずかしくて書かなかったのですが、朝DVMsに来た時の帰り道に、丁度この場所で、奥さんが僕にこう言いました。
「ピーチーが口がきけたら、どうしたいって言うんだろう? もう一回頑張るから手術をしてって言うと思う? それとも、もうしんどいから、これくらいにしといてって言うかな?」

僕はこう答えようとしました。
「決まっているよ。ピーチーは任せるよっていうさ」と……
しかし、”ピーチーは” まで言ったところで、不覚にも嗚咽してしまいました。

無力な自分に腹が立ちました。そして、とても悔しかったのです。
つられて奥さんも大声で泣きだしました。
しばらく2人で、そこで泣いてから家に帰ったんです。

明かりが漏れている同じこの場所――
しかし、今度は泣きませんでした。泣いている場合ではありません。
もう決めたのですから、ここでメソメソしていたら、命を張っているピーチーに恥ずかしいです。

昨日からずっと降っていた雨は、もう止んでいました。

しんどいだろうけど、もう一回一緒に頑張ってみような。
ピーチー

 

――第3章|闘病記を読もう(15/28)・つづく――

この記事について

作者:高栖匡躬
 ▶プロフィール

表紙:今回の表紙は、ピーチーです。

――次話――

劇症肝炎の原因は自己免疫不全なのか?
賭けに出た翌日の話です。
ステロイドの大量投与は、賭けに勝っていれば効果がある。
しかし負けていれば命にめを刺す。
幸い夜間には、急を告げる電話はありませんでした。
そして面会――
目の前に現れたのは――

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――前話――

「難しい状況になってきました」
それが担当医師の第一声。
予断を許さぬ状態ということです。
選択肢は外科手術と内科療法。
どちらにもリスクがあり、間違いは死を意味します。
判断材料が無い――、どうするか?
決断のリミットは夜と告げられました。

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劇症肝炎闘病記の初話です
第3章の初話です 
この連載の初話です
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