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君が旅立つまでのこと

高度医療という選択肢 - 生き残る道が残されていた

高度医療という選択肢

闘病記が教えてくれること(5/5)

筆者の愛犬ピーチーは、いつでも元気一杯で、10歳を過ぎても疲れを知らず走り回っていました。アレルギー性の皮膚炎炎が子犬の事からの持病でしたが、それを除けば病気の予感など一切感じさせない子でした。

そのピーチーが生まれて始めた罹った大病が急性膵炎。突然のことでした。
やがてそれは、胆管閉塞を併発し、遂にはピーチーを死の淵に立たせたのでした。

示されたのは究極の選択

当時主治医からは、2つの選択肢が示されました。
1つ目は、痛み止めなどで対処的に苦しみを和らげながら、"自然な死” を迎えること。
2つ目は、”安楽死” によって、積極的に苦しみから解放することです。

しかし飼い主としては諦めきれませんでした。そんな時、3つ目の選択肢として提示されたのが、一時的に他の病院に転院して、”高度医療” を受けると言う、筆者が当時全く思いもしなかった方法でした。

高度医療と言う選択肢 - 第3の選択肢

一口に ”高度医療” と言っても、ピンと来ない方が多いと思います。
当時の筆者もそうでした。

”高度医療” の内容を言うと、分かりやすく言うと、人間にならば当たり前に行われていて、実績のある治療を、動物にも施そうということです。

例えばCTスキャナーやMRIなどは、今ではちょっとした(人間の)総合病院ならどこにでも入っている機材ですが、当時の動物医療では日本中に2か所しか導入されていませんでした。

そのような高価な診断機器を使って病変を確認し、まだ人間にしか使われていない薬や器具を使って、動物の治療に当たるわけです。

人間ならば、今や怖くはなくなった病気でも、犬にとってはまだ死に至る病というものも多いのです。そこに人間用の治療を持ち込んだらどうかという発想です。

もちろん、それが全てではありません。
時には人間にもまだ試験的にしか行われていない治療(再生医療など)を、動物に行うこともあります。

また熱心な獣医師は、日ごろから海外の論文を読んできちんと勉強をしています。視野を広げてみれば、動物医療は世界中の獣医師や研究者の総合力で、日進月歩で進化しているのです。

それらをいち早く取り入れることも、”高度医療” の重要な側面です。

 

(体験談)ピーチーの胆管閉塞の場合は

例えば、ピーチーを襲った胆管閉塞は、人間であれば腸に侵入する内視鏡と、そこから90度方向に伸びるカテーテル用のアームを使って、割と簡単に外科的治療ができるもののようです。しかし犬の場合には、体のサイズに合う内視鏡もカテーテルも無いために、それができません。

普通ならばそこで諦めるところなのですが、”高度医療”の恩恵として、対案が示されました。人間用の医療器具を使って、胆嚢から腸へのバイパスを造る手術がそれです。

担当医からの治療方針の説明も、”高度医療” ならではの合理的で論理的なものでした。
『この手術の術式は、実施例が国内で2件あります。1匹の場合は成功でした。もう1匹の経過は思わしくありませんでした」
というように、具体的に実例が示されるのです。

手術が失敗するリスクの説明はもちろんのこと、成功した場合の予後のリスクも、きちんと説明を受けました。一般的な動物病院では、とても出来ない対応です。

幸いにもこのときのピーチーは、もう一つ示された別の選択肢――、薬剤を使って胆管を拡張する方法で、辛くも難を逃れました。その薬剤名は失念をしてしまったのですが、通常の動物病院では使用していない、専門性の高い劇薬とのことでした。

 

 動物の高度医療と、人間の先端医療

動物の ”高度医療” というのは、人間の場合でいう ”先端医療” とはちょっと意味合いが違うように思います。

人間の ”先端医療” は、まだ研究の途上にあって、治療実績のあまりない未成熟な技術を使うイメージがありますが、動物の ”高度医療” は、人間では既に豊富な実績のある方法を、犬や猫に転用するという意味合いが強いようです。

例えば抗がん剤は、動物用に開発されたものではなく、始めは例外なく人間用です。
薬剤だけでなく、その投与方法も人間で試されて実績があるものです。
現在、悪性リンパ腫で効果のある、UW25という投与プロトコルは、ウィスコンシン大学で開発されて、人間で成果を上げた後に、犬猫でも用いられるようになりました。

人間に効いたものが全て動物に効くとは限りません。しかし、もしもそれが適合した場合には、治療の大きな助けになることは容易に想像がつきます。

”高度医療”は実は難しそうに聞こえますが、とても現実的な選択肢なのです。

UW25による悪性リンパ腫の闘病記は、下記に掲載されていますので、ご興味があればご覧ください。

【リンパ腫】わたしが、闘病の記録を残そうとおもった理由は 

 

 高度医療の欠点

動物の”高度医療”の欠点は、まずは何を置いても高額である事。次にそれが行える施設が限られることでしょう。

治療自体のコストもさることながら、もしも対応できる病院が近くに無ければ、通院や入院時の面会などにも、多くの時間と費用を要することになるでしょう。長期に仕事を休まなければならない場合もあるかもしれません。

ピーチーが入院した『JARMeC 日本動物高度医療センター』は、神奈川県川崎市にありましたが、駐車場にある車のナンバープレートは、山梨県、群馬県、静岡県など、他県からの受診者が半分以上を占めていました。

遠方から通院されている方々の心労は、さぞかしと思われました。

各家庭ごとにそれぞれの事情があるので、”高度医療” が常に最善の方法というわけではないでしょう。しかしながら、それが選択肢としてあることを知るのは、とても重要なことのように思います。

 

 事例のご紹介

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ピーチーが高度医療によって辛くも命を拾った実例は2つあります。

一例目は、『JARMeC 日本動物高度医療センター』での胆管閉塞との闘い。
こちらは、コラム形式で書いた全4話です。

二例目は、『DVMs動物診療センター横浜』での、劇症肝炎との闘いです。
こちらは時系列にそって、日記のように経過を追っています。

▶ 胆管閉塞闘病記(全4話)
▶ 劇症肝炎闘病記(全17話)

どちらも、高度医療が劇的に奏功して愛犬の命を救ってくれましたが、そこに至るまでには、苦渋の選択が待っていました。

※記事へのリンクは、闘病記配信後に設定いたします。

これから闘病をなさる飼い主さんたちの、参考になることを祈って。

奇跡的に命拾いをしたピーチー。病院の処置室にて。

治らないとはずの病気が治ることも

 

――第3章|闘病記を読もう(5/28)・つづく――

この記事について

作者:高栖匡躬
 ▶プロフィール

表紙:リッキーさん(飼い主:mamamiさん)

――次話――

愛犬ピーチーはある日、急性膵炎に罹りました。
それはやがて胆管閉塞を併発し、一気に危険な状態に――
安楽死を選択?――
しかしピーチーは、奇跡的に戻ってきます。
そこには幾つもの幸運がありました。
振り返れば、奇跡は選択肢の結果の一つだったのです。
4話連載の1話目です。

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――前話――

「セカンドオピニオン」と「二次診療」
知っていても、実行される飼い主さんは少ないようです。
それを嫌う獣医師もいるそうです。
これらはもっと、気軽に利用されるべきです。
治らないと言われた病気が、治癒することもあるのです。

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第3章の初話です 
この連載の初話です
この連載の目次 

 

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