闘病記が教えてくれること(4/5)
我が家の愛犬ピーチーに2度起きた、”奇跡的に命拾いをした” という経験ですが、偶然にもどちらも同じような経緯をたどっています。
どちらも回復は難しい(実際に安楽死を勧められた)と言われる中で、それでも諦めきれずに可能性を探っていった末の出来事でした。
さて、筆者がその2度の ”奇跡” の前に行ったこととは――
専門医と言う選択肢
人間の医療を考えてみてください。人間には病気に応じて内科が有り、外科が有ります。耳鼻科や眼科などもそうです。
更に臓器の働きごとに、消化器系と循環器系に分かれていき、ついには臓器ごとに心臓外科や、肝臓外科のように細かく枝分かれをします。
犬の場合はどうでしょう? お腹をこわして下痢をした子も、心臓に先天的な障害を持った子も、どちらも街の動物病院という、ごく限られた選択肢の枠に閉じ込められてしまいがちです。
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街の動物病院の獣医師は、小型犬から大型犬まで、幅広い犬を診察しなければなりません。超小型犬も超大型犬もです。
体重1キロほどのチワワと、体重100キロを越えるセントバーナードは、生物としては同じ ”犬” という分類でありながら、内臓の動きが全く違います。別の動物と言っても良いくらい違っているのに、一人の獣医師がそれら全てに対応するのです。
獣医師が診察する対象は、犬だけではありません。
猫も診察すれば、フェレットやカワウソも診ます。
哺乳類だけでなく、カメなどの両生類や、鳥も診察の対象です。
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分かるでしょうか?
街の動物病院に対してどんな動物の、どんな病気にも、最高の成果を求めることの方に無理があるのです。
街の動物病院はゼネラリストで、あらゆる動物のあらゆる病気に対応してくれるが、難しい病気の専門性まで求めるのは、始めから無理があるのです。
セカンドオピニオンの重要性
愛犬に重大な病変が発見された場合には、ぜひとも別の獣医を受診され、セカンドオピニオンを取られることをお薦めします。それも納得がいかない場合は、、サードオピニオンも。たったそれだけで、愛犬と飼い主の選択肢は何倍にも広がるはずです。
セカンドオピニオン、サードオピニオンは、大学病院や高度医療センターのような、専門性の高い病院が良いのですが、近隣にそのような病院が無い場合も、他の動物病院で診てもらうことをお薦めします。
常識的に考えれば、街の動物病院の獣医師の中にも、内科的処方が上手い医師と、手術が上手い医師は絶対にいるはずです。そして人間の医師と同様に、獣医師の経験とスキルには、幅があって当たり前です。
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人間の場合でもそうですが、患者が主治医以外の医師に意見を求めることは、今も患者側が二の足を踏む行為です。主治医との信頼関係を壊すことを恐れるからです。
しかしながら、その信頼関係と天秤に掛かっているのが、大切な愛犬の命であることを忘れないでください。
人間の場合に照らせば、主治医に他院でのセカンドオピニオンを願い出た場合、それに難色を示す主治医は、今や患者に配慮が欠ける医師と目されています。動物の場合も早晩、同じように考えられる時代が来るに違いありません。
二次診療と高度医療
セカンドオピニオンと同様に重要なのが、二次診療です。
二次診療とは、主治医が診ている犬の病状が、最早自分の手には負えないと判断した場合に、大学病院や先端医療センターのような、高度な医療技術を備えた病院を紹介し、そこで治療を行うことです。
全ての治療をそこで行うのではなく、最も重要な局面での治療(専門医による手術や、24時間モニタリング下での薬の投与など)を行い、峠を越した後は再び主治医の元での経過観察や投薬に戻ります。(つまり主治医は一次診療というわけです)
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二次診療に自院の患者(犬)を送ってしまうことは、主治医にとっては大きな利益機会の損失でもあります。重大な疾患は高額な医療を提供できる、チャンスでもあるからです。
にもかかわらず、積極的に二次診療対応を行う獣医師は、恐らくは自身の利益よりも、犬の命を救う事の方に力点を置いていると考える事が出来ます。
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愛犬が重大な病気に罹る前から、何かのついでに、
・現在の主治医に対して二次診療をどう思っているのか?
・積極的に進めているのか?
・既に提携済の二次診療センターがあるのか?
・などの質問を投げてみると良いかもしれません。
案外とそれは、良い医師を選ぶための指針になるのではないかと思います。
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筆者も最初から、このような考えを持っていたわけではありません。このような考えに至ったのは、愛犬ピーチーの闘病に際し主治医自身から、二次診療の進言があったことがきっかけでした。
その話は、以下の具体的な闘病記に書こうと思っています。
▶ 胆管閉塞闘病記(全4話)
▶ 劇症肝炎闘病記(全17話)
奇跡的に命拾いをしたピーチーです
――第3章|闘病記を読もう(4/28)つづく――
この記事について
作者:高栖匡躬
▶プロフィール
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表紙:ココナッツさん(飼い主:あおい空さん)
――次話――
筆者の先代犬ピーチーは、2度重い病気に罹りました。
2度とも主治医からの選択肢は2つ。
緩和治療による“自然な死”と、“安楽死”です。
諦められない飼い主は、それとは違う道、高度医療を選択しました。
幸い戻って来た愛犬――
3つ目の選択肢はあるのです。
――前話――
愛犬がいかに重篤な病状にあっても、“奇跡的に回復した”という現象は起こりえます。
しかしその “奇跡” は、ただ祈っていて起きるものではないように思います。
少しでも治る確率を高める努力をした上で、舞い降りる幸運が“奇跡”だと思うのです。
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