闘病記が教えてくれること(2/5)
愛犬が闘病の状態になったとき、多くの方が愛犬の病気についての情報を得るために、ネット検索をされたと思います。
求めていた情報には、すぐに行きつくことができましたか?
恐らく 『病名』や 『病名 犬』 だけの検索では、不要な情報が膨大に検索リストに並んで、探し当てられなかったのではないでしょうか?
筆者は早々に諦めてしまいました。
闘病記は同じ目線で書かれた実体験
病名で検索してすぐに見つかる医療情報は、まるで『家庭の医学』を読むように、概要的なことについてしか書かれておらず、病気の大筋を知るには良いのですが、飼い主が本当に知りたい情報にはたどり着くことができません。
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学術的な論文にヒットすることもありますが、そちらは素人にはなかなか読みこなすことができません。専門用語の意味が分からずその用語について調べると、また更に難しい用語に行き当るということもしばしばです。ほとんどの方は途中で、投げ出してしまうのではないでしょうか?
そんな時に役に立つのが、同じ病気を経験した飼い主さんたちが書き残してくれた闘病記です。
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全く同じ経過、同じ病状というケースは考えにくいものですが、飼い主の実体験に基づいた情報は大きな意味を持ちます。闘病に対する心構えを学ぶことができ、今後起きうる事態に向けて、心の準備ができるからです。
闘病記を読むメリット
闘病記を読むメリットは沢山ありますが、以下に主なものを挙げてみます。
1.現実に起きた事実
先ず一番に挙げられるメリットは、闘病記に書かれた内容は、現実に起きた事実であるということです。これによって読み手は、具体的なイメージとして闘病が想起できます。
2.複数の医師の考え方を知る
次に挙げられるメリットは、複数の獣医師の所見を垣間見ることができることです。
犬の病気は見立てや治療法の選択が獣医師ごとに違い、多岐にわたります。
多くの闘病記を読むことは、多くの獣医師の判断を知る事でもあります。
3.最新の治療法に触れられる可能性
3つ目のメリットは、最新の治療法を知ることができる可能性です。
動物医療は日々進歩していて、数年前には治らなかった病気にも、治療の道が開けている場合があります。
4.失敗のケーススタディ
飼い主の書いた闘病記には、失敗の事例が多く残されています。
医療記事に書かれた ”治療の成功例” は、レアケースである場合も多く、同じことを試しても、”うちの子にはマッチしなかった” ということが良く起こるものです。しかしながら失敗例は、それがどのようなものであっても、今後有り得る可能性として参考にすることができます。
犬の闘病は短期勝負の側面があり、リカバーができないこともあります。転ばぬ先の杖で、悪いケース(或いは最悪のケース)を想定しておきたいものです。
5.心構えと覚悟を学ぶ
闘病記が語るのは、病気に対する知識や、治療の情報だけではありません。
不幸にも病気が進行したとき、愛犬やその病気とどう向き合ったのか?
折れそうになる心を、どのように立て直していったのか?
別れが避けられないと悟った時、どうやって心の準備をしていったのか?
闘病で病気と闘っているのは、愛犬だけではありません。飼い主も闘っています。
孤独感に襲われがちな飼い主の心を、少しだけ先を歩いてくれた別の飼い主の言葉が救ってくれます。
医学書や論文よりも現実的な選択肢
闘病記は我々一般飼い主にとって、読みこなすのが難しい医学書や論文を読むよりもずっと現実的な選択肢であると思います。
また上記の4と5の内容は、医療関係者の書いた記事からは絶対に得られないものではないでしょうか?
以下は、実際に先人の闘病記に助けられた飼い主さんの回想です。
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夢中で読んだ闘病記
「リンパ腫 猫」で検索すると、リンパ腫と闘った猫の飼い主さんのブログがいくつかヒットしましたので、それを夢中で読みました。
検索でヒットしたページは、ほとんどがブログの途中部分でしたので、亡くなっている子も多く、その最期の記事を見るにつけ「うちの猫も…」と気落ちする……
自分でも、不安や絶望が募るだけなのだから検索やめればいいのにと思うんですが、やめられなかったですね。
何も知らないでいるよりは、どんなことであっても知りたかったですから――
(以上、記事の一部を抜粋)
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この例のように、闘病記は完治例ばかりでなく、看取りの記録を兼ねていることも多いものです。飼い主にとって「出来れば知らないでいたい」という情報も、含まれている可能性もあるでしょう。それでも尚、筆者は闘病記を読むことをお勧めします。
結果が良いにしても悪いにしても、知ることによって次にやるべきことが見えてくるのですから。
――第3章|闘病記を読もう(2/28)つづく――
この記事について
作者:高栖匡躬
▶プロフィール
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表紙:もかさん(飼い主:もかままさん)です。
――次話――
愛犬がいかに重篤な病状にあっても、“奇跡的に回復した”という現象は起こりえます。
しかしその “奇跡” は、ただ祈っていて起きるものではないように思います。
少しでも治る確率を高める努力をした上で、舞い降りる幸運が“奇跡”だと思うのです。
――前話――
愛犬が病気になった時、誰かが残してくれた闘病記は、大きな助けになるものです。
それは病気の知識だけでなく、闘病への取り組み方も教えてくれます。
しかし、自分に役に立つ闘病記は探し当てるまでが一苦労。
以前の筆者がそうでした。
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▶ 第3章の初話(前話)です
▶ この連載の初話です
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