本話と次話では、”悩み” のお話をしたいと思います。
愛犬が闘病生活に入ると、飼い主には色々な悩みが押し寄せてきます
犬は口がきけないので、全ての決断を飼い主がしなければなりません。責任が重い分、悩みも深いものになりがちです。
悩みと言うのはやっかいで、放っておくと独り歩きをして、際限なく膨らんでしまうものです。上手く付き合っていくにはどうしたら良いか?
以下は筆者の体験談です。
悩みを『値段』と『賞味期限』で例えてみると
悩みは『値段』と『賞味期限』に例えられるのではないか?
そんなことを思いついたのは、もう15年以上も前のことです。
当時筆者は、九州のある大学院から講師の依頼を受けて、3年ほど自分の講義を持っていました。その依頼の趣旨は、大学院を卒業しても会社員にならなずに、自分で起業したいという学生さんたちに対して、『失敗は怖くない』という話をすることでした。
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毎年、その講義の一番最後に、必ず学生さんたちに話していたことがあります。
それが上に書いた『悩みの値段』と『悩みの賞味期限』です。
「悩む前に挑戦だ! 若者たちよ!」
――と、学生さんたちに、エールを贈るためのものでした。
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それから時が経った2015年のこと。筆者が講義で語った内容は、巡り巡って自分を励ます言葉になりました。
それは筆者の愛犬ピーチーが劇症肝炎を患って、死の淵にあったときのことです。
その時の状況はというと、急速に進行した肝炎に対して治療の術が無く、主治医が安楽死を勧めるほどのものでした。
しかし飼い主としては、諦めきれません。
針の穴に糸を通すどころか、穴の無い針に糸を通すような思いで、必死にピーチーを救う手立てを考えていました。
そんな時、ふと自分自身が大学院で語った言葉、『悩みの値段』『悩みの賞味期限』が、脳裏をよぎったのです。
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この時の闘病の詳細は第3章で触れますが、幸いにもピーチーは、奇跡的に難を逃れて生還します。
危機を切り抜けた後のことです。筆者は自分自身を励ました『悩みの値段』『悩みの賞味期限』を、ピーチーの闘病記として自分のブログに書き記しました。それは、これから愛犬の闘病に臨まれる方への、エールのつもりでした。
こんな講義をしていました - 悩みの値段
以下、大学院での講義を再現してみたいと思います。
悩みの値段について
皆さんは今、何らかの悩みを抱えているはずです。そうでしょう?
なぜ僕にそれが分かるかというと、人間はそんなもんだからです。もしも悩みの無い人間がいたら、アホと言いますね。
それでは悩みを抱えている皆さんに質問です。
もし僕が大金持ちだったとして「君に1億円あげるから、そんな悩み忘れなよ」って言ったらどうでしょう?
悩みそのものは消えないかもしれませんが、案外に”悩みの量”と、”喜びの量”で、帳尻が合って、あなたは不幸じゃなくなるのではありませんか?
もしかすると、喜びの方が勝って、幸せになってしまうかもしれませんね。
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次に金額を減らしてみます。5千万円だったらどうですか?
5千万円もあったら、結構な悩みは我慢できますよね?
それではぐっと金額を減らしてみましょう。1千万円ならどうですか?
こんな風に、少しずつ金額を下げていくと、たいていの悩みは100万円もあれば相殺できそうだと思えてきませんか?
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さて、それでは100万円はどうすれば手に入るのか分かりますか?
今すぐコンビニのアルバイトに応募して、一生懸命に働いたら3か月ちょっとで何とかなるはずです。
つまり、あなたが今何かに悩んでいたら、すぐさまコンビニで3か月アルバイトしなさいという事です。
どうです? 簡単でしょう?
――悩みの値段の講義、ここまで――
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『悩みの値段』は少々乱暴な例えですが、世の中にあるものはすべからく、考え方を変えて見ると違う見え方をするものです。
因みに筆者の場合ですが、ピーチーの闘病の時の悩みは2億円くらいもらえたら、半分くらいまで減っていたかもしれません。しかし4億円もらって消えたかと言うと、消えはしなかったでしょう。
悩みは相対的で揺れ動くもの
ここで申し上げたかったのは、 ”悩み” は絶対的なものではなく、揺れ動くもので、考え方次第で大きくも小さくもなるということです。言い換えれば、 ”悩み” に支配されるのではなく、打ち勝っていきましょう。或いはうまく付き合っていきましょうというご提案でもあります。
この模擬講義が、皆さんが ”悩み” について改めて考えてみる、小さな切っ掛けにでもなれば幸いです。
次話では『悩みの賞味期限』について考えます。
――第1章|犬の闘病とは(8/9)つづく――
この記事について
作者:高栖匡躬
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表紙:S君(飼い主:Pattieさん)
――次話――
人間には悩みが尽きませんね。
いつも何かに悩んでいます。
1年前の今頃も、2年前の今頃も、きっと何かに悩んでいたはずです。
もしかしたら夜も眠れないほどに――
それが何だったのか、思い出せますか?
悩みにはきっと、賞味期限があると思うのです。
――前話――
愛犬が病気になると、よく「頑張って」と励まされることがありますね。
しかし「頑張って」は、時には危険な言葉でもあります。
励ましのはずなのに、逆に心の負担になってしまうことがあるからです。
人の心は、犬ほどには強くはないのです。
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▶ 第1章の初話です
▶ この連載の初話です
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