本サイトのサイト名のMATANE(またね)は、今を去ること3年前の2016年に、筆者が愛犬ピーチーがこの世を去るときに、掛けてあげた言葉です。
別れの挨拶でありながら、再会をどこか期待できる言葉――
ピーチーが病気になった時から、いつか訪れる別れの際にはこの言葉を送ろうと、ずっと前から思っていました。
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MATANEに掲載している記事は、そのピーチーの闘病当時に、いつか訪れるであろう別れを見据えて考えたことを、全80話のエッセイとして綴ったものです。
実はそれらはずっと以前に『カクヨム』という小説サイトで、『うちの子が旅立つまでのこと』という題名で公開していたものでした。
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『うちの子が旅立つまでのこと』は沢山の方々に読んでいただいた、筆者にとって愛着のある作品でしたが、MATANEの兄弟サイトである、Withdog『犬を飼うということ』をオープンした際に、迷った末に一旦閉じる決断をしました。
『カクヨム』が文章しか扱えないサイトだったために、写真を交えた表現力の高いフォトエッセイとして、もう一度『犬を飼うということ』で出しなおそうと思ったからです。
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本サイトMATANEは、『犬を飼うということ』で一旦フォトエッセイ化していた、『うちの子が旅立つまでのこと』の80話を、もう一度原型に戻す試みです。何度も手間をかけるのには理由があります。
『犬を飼うということ』はサイトのオープンから2年が経って、今や700に迫る記事を抱える大きなサイトに成長しました。そうなってみて気が付いたことがあります。
『犬を飼うということ』の基礎となった、思い出深い80話が700の記事群の中に埋もれてしまったように感じられるのです。
MATANEは初心に戻って、1話から80話までを順々に読んでいただけるようにしました。もう一度もとの80話だけで、1つの作品を形作ってみたいと思ったのです。
要するにこのサイト自身が、1つの作品のようなものです。
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本作は、3年前の自分に向けて書いたものと言っても良いでしょう。
当時の筆者は、迷いと悩みの中にいました。ピーチーの介護に臨み、確実に迫って来る別れを前にして、残り少ない命と向き合う意味や意義を探し、時に折れそうになる、自分の心を支えてくれる言葉を探していたのです。しかし、どこにもそのようなものはありませんでした。
やがてあることに気が付きました。
それは、愛犬の死を見つめることは、決してネガティブなものではないということです。むしろその行為は、残された生を輝かせることでもあったように思います。
その気付きを綴ったものが、本作というわけです。
言い換えれば、3年前の自分が読みたかった記事が本作MATANEの中にあるわけです。
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MATANEが、これから闘病に望まれる飼い主さんや、ペットを亡くされて悲しみの底にある方の心に届くことを祈っています。
――高栖 匡躬――